リモートワークが定着しつつある現在、場所にとらわれない働き方を選ぶ起業家やフリーランスが増えています。ヨーロッパ、特にEUは移動の自由がある事から多くのノマドワーカーがより過ごしやすい土地へ生活拠点を移しています。
その中でもスペイン南端に近い、地中海の小さな島国マルタ共和国は近年デジタルノマドの注目を集めています。EU以外からの人も長期滞在できるデジタルノマドビザを発行するなど、ヨーロッパでリモートワークをしてノマド生活をしたい人には、おすすめできる条件が揃っています。そのひとつひとつを見ていきましょう。
世界中のノマドワーカーを惹き付ける、マルタってどんな国?
マルタ共和国はイタリア最南端のシチリア島からフェリーで1時間45分のところにあり、地中海の中心に位置します。マルタ島、ゴゾ島、コミノ島の3つの島からなり、人口は45万人、東京23区の半分程の大きさの小さな島国で、深い歴史を持つ魅力あふれる国です。
世界遺産があり、リゾート地や観光地としても有名ですが、物価もヨーロッパにしては比較的安く、英語が公用語となっていて語学学校が多い事から、日本人の英語留学先としても人気があります。
マルタが日本人ノマドにおススメな理由
リモートワークしながらヨーロッパに滞在したいノマドに、マルタはかなりおすすめできる移住先と言えます。その理由をいくつか挙げてみました。
- 美しいヨーロッパのリゾート地で生活
- EU加盟国では物価が安め
- 安定したインターネット環境
- 気候が温暖
- 治安が良く、安全
- 英語が公用語、英語留学先としても最適
- デジタルノマドのコミュニティが活発
美しいヨーロッパのリゾート地でノマド生活を満喫
マルタは小さな国ながら見どころがたくさんあります。首都でもあるヴァレッタ(Valetta)は中世ヨーロッパの三大騎士修道会の1つ、聖ヨハネ騎士団によって築かれた城塞都市で世界遺産にもなっています。
美しい地中海に囲まれた島国なので夏はリゾート気分も味わえます。マリンスポーツも盛んです。
またイタリアのシチリア島は目と鼻の先。LCCなどのフライトも含めヨーロッパ各都市へのアクセスが良く、マルタを拠点にヨーロッパをあちこち見て回りたい人にもおすすめ。
EU加盟国では物価が安め
ヨーロッパ・EU加盟国は物価が高い国が多い中、マルタは比較的物価が安いです。Eurostatの2020年の統計によると、マルタの物価レベルはEU平均を100とした場合89.6。EUで最も物価の高いデンマーク、アイルランドが140、最も安いブルガリアが55です。
安定したインターネット環境
ノマドワーカーにとって重要なネット接続状況。モバイルインターネットインフラが整っているマルタは、5G接続が国全体で使えるようになったEUで最初の国です。
Wi-Fiが使えるカフェも多くありますが、マルタのデジタルノマドに評判が良いWi-Fiカフェは、街中でもよく見かけるチェーン店のCOSTAです。
気候が温暖
冬でも最低気温が10 °Cを下回る事は少なく、夏は最も暑い7月・8月の平均最高気温が32 °Cと、過ごしやすい気候。夏はそれなりに暑いですが、美しい地中海でのマリンスポーツやビーチを堪能できます。
ヨーロッパ各国からマルタに移住するノマドが多いのも、太陽が降り注ぐ暖かな気候が大きな理由かもしれません。
治安が良く、安全
マルタに住んでいるノマドにマルタの魅力を尋ねてまず返ってくる返事が「マルタは治安が良くてとても安全」という事。女性が夜ひとりで道を歩くのも恐怖感はないと言います。治安のよい日本に慣れている私達から見た場合とドイツやフランスから来た彼等とは比較基準が違うかもしれませんが、ヨーロッパの多くの国と比べて安全なのは確かなようです。
英語が公用語、英語留学先としても最適
海外でのノマド生活の充実させるには、毎日の生活、地元の人々や世界中からやってきたデジタルノマド達との交流など、周囲とどれだけコミュニケーションがとれるかも大きなポイント。マルタは英語が公用語なので殆どどこでも通じます。
英語がちょっと不安な人には、英語留学もおすすめ。マルタには外国人向けの英語学校がたくさんあり、日本人留学生も大勢マルタで英語を勉強しています。英語学校に通いながらリモートワークをしてマルタでのノマド生活を堪能するのも良いでしょう。
マルタのノマドコミュニティ
マルタには主にヨーロッパから多くのデジタルノマドが移住しているため、ノマドコミュニティの活動が盛んです。
中でもマルタのノマドコミュニティを牽引しているのがCocoHub。CocoHubはマルタを拠点とし、グローバルにノマドを繋ぐ活動を行っています。
CocoHubは定期的にデジタルノマド向けネットワーキングイベントを開催している他、チャットアプリのテレグラムを利用したグループではノマド同士が情報を共有したり、自由にコミュニケーションできる場を提供しています。
マルタのCocoHubグループには250人以上が参加していて、おすすめのコワーキングスペースやコリビングを教え合ったり、新しくマルタに移り住んだ人の質問にベテランのノマドワーカーが回答したりと、フレンドリーな会話が活発になされています。
マルタ政府が1年間滞在OKのデジタルノマドビザ発行
2021年6月、マルタ政府はリモートワーカー向けにデジタルノマドビザの発行を始めました。「Nomad Resident Permit」と呼ばれるこの許可証を持っていれば、1年間マルタに滞在する事ができます (更新も可能)。わかりやすいようにデジタルノマドビザと呼んでいますが、厳密には滞在許可証となります。
マルタはこれまでにも主にドイツ、フランス、ポーランドといったEU諸国からデジタルノマドが多く移住していますが、デジタルノマドビザによりEU以外の国民にも広くマルタでノマド生活の門戸が開かれました。
マルタ滞在中はリモートで仕事をして収入を得る事が許可されますが、マルタ国内でビジネスをしたり現地の企業に雇用されたりは不可となります。
マルタのデジタルビザの現況
マルタ政府がデジタルノマドビザの発行を開始してから約半年後の2022年1月、政府機関であるResidency Malta Agencyが現況を発表しました。それによると、半年間での申請数は180件で、国籍はイギリス、米国が多く、続いてインド、中国、パキスタン、カナダと続いています。日本からの申請もありました。
申請者の平均年齢は37歳。30~39歳が34%と最も多いですが、30歳未満が26%、50歳以上が20%と年齢は多岐に渡っています。 デジタルノマドというと若い世代ばかりを想像しがちですが、 様々な年代の人がマルタの滞在許可申請をしていることが分かります。
職業については49%が外国の企業に雇用されている会社員、42%が外国に拠点がある経営者、9%がフリーランスという事です。
マルタのデジタルノマドビザ取得条件
- リモートでできる仕事をしている事を証明できること
- マルタ以外の国の雇用主と雇用契約を結んでいる
- 自身がパートナー/株主であるマルタ国外の事業の経営者
- マルタ国外の事業者を主な顧客とするフリーランス
- 月の収入が2700 EUR (税別) 以上ある事
- 有効な旅券を有している事
- マルタで有効な健康保険に加入している事
- 住居の賃貸契約または購入契約をしている事
- バックグラウンドチェック(身辺調査)をパスする事
滞在許可証の申請には家族(配偶者と未成年の子ども)を含める事ができます。
マルタのデジタルノマドビザ申請方法
マルタの政府機関であるResidency Malta Agencyに申請書と意向表明レター、必要な添付書類を提出します。
マルタに180日までの滞在を予定している場合は、National Visaが発行され、181日~365日の滞在を予定している場合は、Nomad Residence Permitが発行されるので、申請する前に滞在期間を決めておく必要があります。
Residency Malta Agency のウェブサイト
提出書類
申請フォーム N1 / N4 (家族同伴の場合はN2も):各申請フォームはResidency Malta Agencyのウェブサイトからダウンロードできます。
意向表明レター (Letter of Intent):申請者のマルタ移住とNomad Residence Permit申請の意向を明確に記し、日付と署名を入れた書類。申請にあたって添付する書類のリストも記入します。英語で作成する必要があります。
添付書類
申請に必要な添付書類のチェクリストはこちら。
添付書類は雇用契約書や銀行の口座明細などけっこうな数があり、すべて英語で書かれていないければなりません。日本語の書類はプロの翻訳者による署名付き翻訳が必要になります。
会社員、経営者、フリーランスによっても提出書類が異なっていたり、家族を同伴する場合は追加の書類が必要になります。手続きが不安という人は、マルタのデジタルノマドビザ取得コンサルタントに相談してみるのも良いかもしれません。
申請費用
300 EUR
手続きが不安な場合は現地コンサルタントに相談も可
マルタのデジタルノマドビザは長期滞在ビザなので、申請時の手続きはやはり多少面倒ではあります。また居住地の確保や移住後の生活について不安がある人も多いでしょう。そのような人は現地のコンサルタントに相談してみるのもおすすめです。
Nomad Visa Maltaはデジタルノマドビザの取得から移住に際してのサポートを行うコンサルタント。代表のLuca Arrigo氏はマルタ出身で、デジタルノマドのカンファレンス等でもパネリストとして時々登壇しています。相談は英語のみ受け付けています。
マルタのコリビング&コワーキングスペース
マルタのコリビング&コワーキングスペースをいくつか紹介します。マルタにはたくさんのコワーキングスペースがありますが、特にデジタルノマドやリモートワーカーのコミュニティをサポートしている施設を選びました。
Evolve Coliving Malta (コリビング)
マルタで2軒のコリビングを展開するEvolve Coliving。
San Gwannの閑静な住宅街にあるTHE WHITE HOUSEは歴史のありそうな大きな邸宅を改造したコリビング。観光客にも人気のSliema地区に新しくオープンしたTONAはカラフルなデコレーションが印象的。
コワーキングスペース、共同キッチン、リビングエリアが完備されています。THE WHITE HOUSEにはBBQ設備のある屋外プール、眺めの良い屋上があり、コリビングに住む住人の憩いの場となっています。
全室とてもおしゃれな個室なので、共同生活は楽しそうだけれどプライバシーも大切にしたい人におすすめです。
コミュニティーの精神を大切にしていて、入居には審査がありますが、スタッフはとてもフレンドリー。マルタでインターナショナルなノマド生活を送りたい人は必見のコリビングです。
SC Cowork (コリビング&コワーキング&英語スクール)
大きなプールが目を引くSC Coworkは、マルタでも有名な英語学校Sprachcaffeのキャンパス内にあります。
St. Julienからほど近いPembroke地区にあり、周りにはインターナショナルスクールや大学など学校が多い閑静なエリア。広いキャンパスにはプールの他にコワーキングエリア、レストラン&バー、ミーティングルーム、コリビングがあります。
コリビングはWi-Fi完備のアパートメントで、ひとつのユニットに個室が4つあり、共同キッチン&ダイニングとバスルームがあります。ノマドワーカーだけでなく、英語を学びに来ている留学生もこのアパートに滞在しています。
Sprachcaffeでは少人数のビジネス英語クラスもあるので、リモートワークをしながら英語力を向上させるにはもってこいの施設です。またマルタ現地ツアーなど様々なアクティビティも企画されています。
コワーキングのみの利用も可で、1日パスは14 EUR、1か月パスは189 EURとなっています。料金にはプールの利用も含まれています。
日本人からの留学生も多く、日本人のスタッフがいるので、マルタでこれからデジタルノマド生活を始める人には良いスタートポイントかもしれません。
SOHO office space (コワーキングスペース)
マルタのGzira地区に2軒、St. Juliensに1軒のコワーキングスペースを運営するSOHO。プライベートオフィス、デスクスペース、ミーティングルーム、イベントスペースを提供しています。
都会的でスタイリッシュな内装、 メンバー向けのラウンジ、広いテラス、カフェ&バー、ジム&ヨガエリア、サウナ付きシャワーまで完備され、利用者が快適に仕事ができるような設備が充実しています。
ホットデスクの料金は1日30 EUR、1か月365 EURです。
ネットワーキングイベントも行われていて、上記で紹介したマルタのデジタルノマドコミュニティCocoHubの主催するイベントもSOHOコワーキングで開催される事があります。
マルタ デジタルノマド関連サイト
Residency Malta Agency : マルタ政府のデジタルノマドビザ「Nomad Residence Permit」発行機関
Malta Digital Nomad Association : マルタのデジタルノマド情報
CocoHub : マルタを拠点とするデジタルノマドコミュニティ
Nomad Visa Malta : デジタルノマドビザ取得サポートや移住コンサルティング